最近プロジェクト・ヘイル・メアリーと三体X 観想之宙を立て続けに読み、SFってなんて素晴らしいんだろうと感動に浸っております。
SF作品というのは私の人生には欠かせないもので、SF作品が与えてくれる宇宙の広さ、過去と未来の時間の広がり、人生や命への価値観などは私自身の全てに影響を与えています。
SF作品に親しんでいなければ、何千光年彼方のこと、何百億年先のこと、時間のない宇宙のことを考えたことはなかったでしょうし、無機生物、人工知能、高次元生物から見た人間というものについての想像力というのも今よりももっと狭かったでしょう。
それらは私自身の理解や他者との関係作りの助けになっていますし、最近ですと「人工知能は我々の生活をどう変えるのか」といった現実の問題の理解に役に立つことも出てきました。
このようなことから私はSF作品抜きの自分というものを想像することはできません。しかしだからこそ、SF小説を読んでいる人がこれほど少ないというのがなぜか不思議でしかたありません。SF小説読んでる人はどれぐらいでしょうか。人口全体の3〜5%もいないぐらいですよね。そこで会社の共同創業者に相談したところ次のような議論になり納得しました。
SF作品は自分の世界の認識を一生変えてしまうような体験を提供してくれるのになぜこれほどまでに読まれないのかという長年の疑問を @HirokiMori にぶつけたら「世界の見方を変えたい人はそんなにいないのでは?」とあっさり納得させられた。なるほど。確かに変えなくてもいい。
— とよし (@toyoshi) 2022年7月14日
まあ確かになと思いました。あと @HirokiMoriにいわれたのは「難解なイメージがある」「SFというジャンルを言われたときに幅が広くてとっつきにくい」ということでした。それも確かにそうだと思いました。
そこで、世界の見方を変えたい人がそれほどいないのはしょうがないとして、難解なイメージやとっつきにくさというのは変えられると思いました。なので、私なりにSFに一歩足を踏み入れてもらうための作品を考えてみました。
お題としては「もしSFにのめり込んで欲しい人にSF小説を人に勧めるなら」という感じです。個人的にあくまでも小説の世界が好きなので漫画や映像作品は今回のリストでは抜くことにしました。
小説自体ほとんど読まない人向け
全く本を読まなかったり、活字が苦手というレベルの人にはこちらをオススメします。1作品数ページ程度の短編集です。読みやすい。全部あらすじを読んでいるようなものですが、しっかりとこちらの想像力を刺激してくれます。
ボッコちゃんの中だと「ねらわれた星」は特に好きな作品です。凶悪な宇宙人が地球に攻めてきて、なんと皮膚を溶かす攻撃をしてくるのですが・・・という話です。単に宇宙人をやっつけるのではなく「なるほど、異文化の宇宙人からしたらそうかもな」というSFの醍醐味が手軽に味わえます。
次は難解すぎない内容ながら時間や宇宙の広がりを感じる作品ということでこちらをお勧めします。フィクションと現実感のバランスがよく、本当にあった話かのような感じもしつつ壮大な話になっており、最後の終わり方もすっきりなところが良いです。あまり構えずにミステリィ小説を読むつもりで入っていけるかと思います。
人類が月面お調査中に数万年前の宇宙服を着た何かを発見するところから話は始まります。チャーリーと名付けられたそれの所持品や各種計測、探索によって徐々に秘密が明らかになり・・・という話です。
小説を読むことは普段するがSF作品に触れたことない人向け
SF小説を読み始めた頃だったこともあり、冒頭の数ページで「こんなに壮大で荒唐無稽な話があるのか」と衝撃を受けた作品です。
地球が宇宙規模の工事のために破壊されるが、実はその地球を作ったのは・・・というストーリーです。空間的な広がり、高次元生物、地球で一番賢い生き物とは?などSFのエッセンスが盛りだくさんながら全体としては明るいノリで楽しめます。
普段小説を読んでる人だったら「こんなめちゃくちゃな小説もあるんだ」と面白がってもらえると思います。
AIが搭載された戦闘機を使って謎の宇宙生命体と戦う話です。
私は「戦闘機は別に興味ないしな」と思いながら読み始めたのですが「なるほど戦闘機のAIが高度に進化するとパイロットとの関係はこうなるのか」「戦闘はこう変わるのか」「こういう宇宙生命と戦うときはこうなるのか」「人間はこう見られるのか」となるほど〜が連続します。
ここで登場するAIの考えた方というのは戦闘機に限らず応用できるものです。AIの未来を考えるとき「もしAIがこの分野で発達すると雪風なら・・・」といつも思い出します。
続編の方は途中から訳わからなくなったのですが1作目のこちらはオススメです
宇宙人やタイムトラベルなどの空想話には興味がないという人にはこちらをオススメします。
これは火星に取り残された主人公がそこにあるものだけを使ってどう帰還するかという話です。多くのSFには「もし宇宙人がいたら」「もしタイムマシンがあれば」というフィクションを基点に物語が作られますが、これは火星に基地があるということを除いてそういうものがありません。全て現代の技術で作者の科学考証を元に課題を解決していきます。
火星基地にある限られた食糧や燃料や物質を使ってどう生き延びるのか、どう火星を脱出するのかというところで「なるほど密閉された基地内では質量保存則(あるいは物の出入りがないこと)が働くからそういう計算ができるのか」「火星だからそんなことができるのか」と事実に基づいた話だからこその楽しさがあります。
すぐにはオススメしないが読んで欲しいSFの魅力つまった作品
この小説を読んだ後だと、入道雲を見るたびにこの作品を思い出すことになります人間と全く違うような生命とコンタクトを取るときどうなるか。そんな話です
太陽を奪いにくる宇宙人というだけでスケールが大きいのですが、もしその宇宙人が高度に発達しすぎてたらどうなるのかという話です。
高度に発達した宇宙人というとどういうイメージでしょうか。すごい技術で地球を破壊したり、ワープしたりという感じかもしれませんが、もっともっと高度になっていて、我々と蟻ぐらいの差がついていたことをイメージしたことはあるでしょうか。そういった面白さがあります。
SFに限らず、読書の魅力とはその本を読む前と後で世界を同じように見れなくなることだと私は考えますが、「あなたの人生の物語」はまさにそれに該当します。自分が信じていた時間の流れというものが疑わしくなり、さっき起きたこと、今起きていること、これから起こることの区別が曖昧になります。
その他に難解すぎず心に残っている短編集だと老ヴォールの惑星も好きです。コンタクトも異星人と交流するには何を使う?というテーマで面白いのですが今だとプロジェクトヘイルメアリーでよいかもしれません。
オススメされることが多いが1冊目としてオススメしないもの
私が読んだことのある作品かつ、人気のあるもののうち、入門するのにオススメしないものを紹介します。
主に古典名作なのですが、古典作品は名作ゆえにそのアイデアが今では当たり前になっているものが多いです。テレビゲームを初めてやる人にゲーム&ウォッチやピンポンを最初にオススメするようなことは(普通は)しませんよね。
- ニューロマンサー:難解なわりに今では当たり前の設定(仮想世界)です
- 幼年期の終わり:めちゃくちゃ面白いけど、入門作品としては派手さが足りない
- アンドロイドは電気羊の夢を見るか:今では当たり前(サイボーグ)
- ハイペリオンシリーズ:長い。全部入り小説を読みたいなら今なら三体がいい
- 夏への扉:今では当たり前(冷凍睡眠・タイムトラベル)。最初の数ページだけでよい。
- エンダーのゲーム:今では当たり前の話。続編の死者の代弁者は非常に面白い
- 宇宙の戦士:今では当たり前(パワードスーツ)
- 虎よ虎よ:今では当たり前(加速装置)
- タイタンの幼女:壮大だが私には難しかった。洞窟にペラペラしたかわいい生き物がいたことしか覚えてない
どれもその価値は色褪せることはありませんし、あえて古典を読むということであれば良いですが、1冊目としてはオススメしません。
最後に
私が読んできたSF作品というのは多くても100冊程度ですので、本当にこのリストがどう見られるか気になりますが、もし私が友人や家族に勧めるならという点で選びました。もしこの傾向から「これもすきなんじゃない?」というのがあれば是非教えてください。