toyoshiの日記

株式会社トクイテンを有名にするための日記です

食器に反脆弱性を与える金継ぎの技術のすすめ

私が金継ぎに興味をもったのは5〜6年前に子どもと愛知県立図書館に行った時でした。図書館でDIY特集がされており、そこで金継ぎの本が目に入ったのです。それまで金継ぎされた食器をみたことはありましたが、それが金継ぎという名前の技術だとは知りませんでしたし、ましてや家でできるようなことだとは思っていませんでした。(そもそも金継ぎ[きんつぎ]の読み方もその時知りました)

ただその時は習得したいと思ったものの、調べてみると金継ぎには漆を使い、漆の乾燥に2週間かかるなど、私にとってはお手軽とはいえない物だと知り手をつけられずにいました。

初めて直した茶碗。今見ると塗料が過剰に盛られてるが、それでも直っている。

やるぞ!となったのは昨年の春です。妻が大事にしていたサザエさんの茶碗が割れてしまい、これはなんとか直したいとなったのです。

そこで調べてみたところ、以前はなかった簡単に直す方法を紹介されている記事を見つけました。

www.defraglife.net

これの方法はボンドや塗料などを使って安全かつ簡単に食器を修理する方法です。ボンドで接着して、セラミックで穴を埋めて、最後に塗料を塗ってオーブンで焼くだけ。とても簡単で道具も少ないです。

しかもボンドや塗料は食器に使っても大丈夫なものが選んであります。

金継ぎというのは漆を使って食器などを修復することをいうので、これは金継ぎとはいえません。しかし今私がやりたいことは食器を直したいということなので問題ありませんでした。

3回目にやった食器。技術が向上し、塗料が薄く塗れるようになった。

やってみてわかったのは金継ぎ(食器の修復)ができるようになることは、単にその食器の購入費用以上の価値があるということです。

  • 食器を捨てなくて済む
  • 修復した部分が思い出になり愛着がわく
  • 食器や陶器を脆いものを考えなくてよくなる(反脆弱となる)

長くなりますが、長く語りたいことなので順番に説明させてもらいます。

食器を捨てなくて済む

まずこれは当たり前ですが、割れた食器を捨てなくてよくなります。またペアになってるものの片方だダメになったから全部が台無しになるということも無くなりました。カップ&ソーサー、ペアのグラスやマグカップ、4枚セットのものなどです。これらの一部でも欠けると、セットごと買い直したいという気持ちになりますがそういった悲しみがなくなります。

修復した部分が思い出になり愛着がわく

金継ぎはあえて傷を隠さず、逆に魅力に変えるというような手法です。銀や金に塗ることで傷に着目するたびに割れた時や、直した時を思い出し、「お前も大変なことがあったよなあ」と一緒に苦労を共にしてきたような温かい気持ちになります。(塗る色は自由で、必ずしも派手な色にする必要はありません)

傷や欠点を隠したりせず向き合うことは、人間や自分自身の生き方と重ねて考えてしまうこともあります。傷は傷ですし、欠点は欠点です。それを変えようとしても変わりません。ただ傷をどう考えるか、欠点をどう使うかというのは自分次第です。傷や欠点に関する格言はいろいろありますが、オードリー・ヘプバーンも次のように言っています

一個の道具のように自分を分析しなさい。自分自身に対して100パーセント率直でなければなりません。欠点を隠そうとせずに、正面から向かい合うのです。

食器や陶器を脆いものを考えなくてよくなる(反脆弱となる)

個人的にはこれが一番やってよかったなと思っていることです。金継ぎができるようになるまでは食器や陶器は「絶対に割ってはいけないもの」でした。また、少しでも欠ければ価値はものすごく下がり、愛着も無くなっていました。

しかし実際にはアートや美術品が定期的に修復されて受け継がれていくように、手を入れることは価値を損なうことではないのです。

修復ができるようになってから私にとって食器は割れても直せるものになり、その上、以前より美しく、愛着も感じるものになりました。

ナシーム・ニコラス・タレブの書籍『反脆弱性』では、世の中で強いものや組織というものは脆弱や脆いものの反対のもの、つまり反脆弱性のあるものだと書かれています。反脆弱的な性質とは例えば筋肉や骨のようにダメージを受けた後、その部分が以前より強くなるようなものです(だから生物は強い)。

金継ぎの技術は食器を脆いものから、(修理可能なもの以上の)反脆弱性を備えたものとしてくれます。私にとって反脆弱な性質を自分の手で与えられるというのは魔法を使っているようで、とても気分がいいです。

必ずしも金や銀じゃなくてもいい(こちらの画像はUnsplashより)

気軽に始めよう

職人がやったような美しい金継ぎを目指すと身構えてしまいますが、まずはAmazonで揃う材料でボンドでペタペタくっつけるだけのところから始めるのはとてもおすすめです。なんせこれは金継ぎではありません。単なる修理です。それに自分が使うものなのだから直し方が完璧である必要はないです。なんならヘタクソなことも含めて思い出になります。ぜひ、この食器に対する自由な気持ちの変化を多くの人に味わってもらいたいなと思ってます。おすすめです

おまけ:私が使っている道具紹介

割れた箇所の接着に使います

欠けた場所を埋めるパテ代わりに使います

最初はアウトライナーを使っていましたが薄く塗りたいのでこちらを使ってます

細く塗るのに使っています

Amazonで私が使ってるのと全く同じものは見つけれませんでしたが、上記のような細い棒やすりで鋭利な部分を削ったり、溝が細すぎて接着剤が十分入らないところを削るのに使っています。