toyoshiの日記

株式会社トクイテンを有名にするための日記です

ケーキの切れない非行少年たちを読んだ

ケーキが等分できない、図形が模写できないなどの認知能力の低い人が少年院などには多いことが著者の調べてわかった。そういう人にはいくら反省を促しても、自分がやったことの何が悪いのかわかっていなかったり、反省するということがどういうことかわかっていないので出所しても犯罪を繰り返してしまう。そこで認知能力を上げるトレーニングをしてやることが当人のためにも社会のためにもよいのではないかという本でした。

表題のケーキがきれないというのはこんな感じだそうです

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少年院にいる人にケーキを3等分や5等分してと頼むと上図のような切り方をしてしまうという人が一定数いるそうです。この切り方は知能レベルの低さを表しており、小学校低学年や知的障害を持った子どもにはみられます。問題はこのテストを受けたのは強盗、強姦、殺人事件などを起こした中高生だということです。

また、図形の模写でも下図のようなレベルになることがあるそうです。

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うまい下手ではなく、そもそも線や四角の数が足りなかったりするのは私にはショックでした。これぐらいの模写ができない人に、反省させたり、被害者の気持ちを考えさせたり、また同じようにお金に困ったりしたらどうすればいいかということを考えさせるのがいかに難しいかということがよくわかります。

‬他にもこのような例がありました。

ある殺人を犯した少年も、「自分はやさしい」と答えました。そこで「どんなところがやさしいのか?」と尋ねてみると「小さい子どもやお年寄りにやさしい」「友だちからやさしいって言われる」と答えたりするのです。〝なるほど〟と思いました。そこでさらに私は「君は○○して、人が亡くなったけど、それは殺人ですね。それでも君はやさしい人間なの?」と聞いてみますと、そこで初めて>「あー、やさしくないです」と答えるのです。  逆にいうと、〝そこまで言わないと気付かない〟

こちらの例も驚かされました。これぐらいの感じだと、どんな会話をしたとしても意図通りの情報交換ができたかどうか自信が全くもてません。他にもこんな能力が弱いことが多いそうです

‪ ・認知機能の弱さ……見たり聞いたり想像する力が弱い ・感情統制の弱さ……感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる ・融通の利かなさ……何でも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い ・不適切な自己評価……自分の問題点が分からない。自信があり過ぎる、なさ過ぎる ・対人スキルの乏しさ……人とのコミュニケーションが苦手 +1身体的不器用さ……力加減ができない

このような認知能力に問題があると日常生活にも困りますし、従来の知能テストの対象外か、基準の境界にいるので支援が受けられない‬ということもあります。支援が受けられないと仕事もできないし、相手の気持ちを考える力が弱いとまた困ったときに盗みをするなどしてしまうことにつながります。

では、対策はないのでしょうか。筆者は‪適切なトレーニングで驚くほどよくなることがある‬ことがあると提唱しています。

本書を読んでみて、いろいろな問題の根元に「見るちからが弱い」「聞く力がよわい」というような基本的な能力の欠如が犯罪につながっているというというのに新たな視点をもらいました。例えば漫画などでも典型的な「何みてんだお前!」「何いってんだお前?」みたいな決まり文句も、見る力が弱いから睨まれてると思い込む、聞く力が弱いから自分の悪口を言われていると思ってしまうというわけです。本書では他にも様々な基本的な能力の欠如がどう問題行動に繋がるか具体的に示されていてなるほどと思わされますし、自分自身にも「XXがこういう行動をしたのは、私が嫌いだからだろう」などと決めつけて考えるような程度のことは あるので今後の生活にも役に立ちそうに思いました。

全ての問題が認知トレーニングで解決するということはもちろんないと思うのでそこは気をつけて考えるべきですが、自分自身の行動を振り返ったり、他人の振る舞いの解釈の幅を広げるのにとても良い一冊になりました。せっかくなので同じ筆者の認知トレーニング本も買って少しどんなものかみてみようと思います。