トークンエコノミーを作りたいな〜と考えるようになったのでちょうど発売予定だった本書を予約して読んだので読書感想を書きます。
株式会社を進化させられる?
私がトークンエコノミーに期待しているのはこの部分です。私は会社を創業して売却するという経験をしていますが、どうも株主と経営者、従業員、顧客という関係に違和感がありました。それぞれが仲良く同じ目的のために集まったはずなのに、報酬のこと、サービス提供のことなどになると意地悪とまではいかないにしても、利害が一致しないことがあるからです。株式会社の枠内でストックオプション を多く発行したり、議決権のない株式を発行したりと工夫をしている会社もありますが、どうもそもそも無理があるんじゃないかなという疑問があります。
なので、テクノロジーの進化もあって、もしかして株式会社という形はネットがない時代にフィットしてただけの仕組みなんじゃない?と思うようになりました。
トークンエコノミーとは
トークンエコノミーとはデジタル通貨による新しい経済圏のことです。企業や団体が発行することで特定の目的やサービスなどに活用できることができる代替通貨を(広い意味での)トークンとして本書では使っています。特定の範囲や対象でのみ使用できるトークンを介して閉じた経済圏を構築し、その中で配布者が意図した経済活動をするように仕向けることで、皆の利害を一致させたままコミュニティを持続・成長させられるという期待がされています。
既存の似たような仕組みとの違い(ブロックチェーンの特性は省く)
法定通貨との違いは、トークンを経済圏内で使っているうちは手数料がかからないというメリットがある。また、用途を限定したり、一定期間は価値を倍にさせるなど柔軟な設計ができる。
株式会社との違いは、全員が株主になる感じに似ているが、組織の所有権を渡す必要がなく、トークンがサービスの利用などに利用されることによって株式より高い流動性が期待できる。
企業の発行するポイントシステムとの違いは、運営・維持コストがほとんどかからないということです。
社会でのトークンエコノミーの事例
- この本の著者の運営するサービスのマンガKINGでは、トークンでユーザーが積極的に運営に参加することでインセンティブを得られる仕組みとなっておりユーザーと運営者の両方が主体となり共同でプラットフォームを活性化するという関係性を構築しています。漫画トークンではハッカに投げ銭という形でトークンを使用できます、作家は受け取ったトークンをマンガキング内の広告枠で使ったり制作ツールや背景素材を購入するのに使えます。
- ニュースメディアのスティーミット。このスティーミットは独自のブロックチェーンで開発されたプラットフォームでユーザーが投稿した記事はブロックチェーン上に保存され投稿したユーザーには掲載記事の評価に応じてトークンが支払われます。また閲覧者もコメントなどをすることによってどう考えられるようになっています。
- アイドルでのコミュニティでトークンを使用する。コンサートのチケットをトークンで販売したり、スタッフへの支払いをトークンで行う。アイドルの価値が上がることによりトークンの価値も連動してあがり皆に見返りが回ってくる。
- 韓国において地域振興用のトークンとして発行された成功された仮想通貨の例。韓国ソウル特別市のノウォン区は2018年1月地域振興用のトークンとしてノウォン・キャッシュを発表しました。この取り組みが面白いのはこのトークンの入手手段が法定通貨との交換だけではなく、同市内でのボランティアに参加することで受け取ることができたり地元のフリーマーケットなども利用できるようになっているという点です。この施策はうまくいき2018年8月までに6700万ノウォンキャッシュが流通しています。
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広告配信のプラットフォームで使用し、広告を掲載するプラットフォームが広告主に対して虚偽の報告をすることを不可能にするという利用方法
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和製スティートミットとも言われるメディア「ALIS」。投稿した記事が人気が出たり、記事にコメントをするなどの貢献をすることでトークンを入手。
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取引所トークン。取引所が発行しているトークンでトークンの保有量に応じて配当を受けたりその取引所での手数料が割引されたりする。
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ポリポリは日本初の政治コミュニティプラットフォーム。信頼性の高い投稿をした人にはインセンティブとしてトークンが配布される。
感想
みんなに利益が還元されるってことは、それって何にもないのと同じじゃない?とか、みんながやり出したらどうなるの?そんなにみんながトークンの利用にすぐ順応できるの?などの疑問はありますが、とにかく最初の株式会社の課題を解決できるかもという可能性は感じました。
特にトークンがもつ特徴と、ブロックチェーンがもともともつ透明性、堅牢性といった性質、そしてスマートフォンの普及やキャッシュレスの流れが加わり、トークンエコノミービジネスのための環境が整ってきているのは間違いありません。さらに、これは私の感覚的なものですが人々の消費社会への疲れのようなものが合わさって、これからの時代に求められているように思います。
まずは事例として紹介されているところに参加できるところからしてみたり、自分でトークンを発行したりして体験してみようと思います。