23日に約6年ぶりとなるプロ棋士とコンピューターの公式戦が行われ、阿部光瑠(あべこうる)四段(18)が「習甦(しゅうそ)」に勝利しました。
人間側が0:5で負けるなどという前評判もあったり、負ければこれが初のプロ棋士の敗北となるため「勝って当然、負ければ歴史に名が残る」という非常に大きいプレッシャーの中、見事勝利を収めたことに感動しました。
僕はまだ将棋倶楽部24ではレート300前後の初級者だが、そんな僕の観点から面白かった点などを記したいとおもいます。
大局観。コンピュータが遠い先を読む難しさ
上図は15手目で阿部光瑠四段が端の歩を1つ上(9六)に進めた場面である。これは序盤によくある手で、主に自分の制圧している面積を増やしつつ、終盤に攻められた時に上部に玉が逃げやすくし、さらに端から攻め安くするという1手で三粒美味しい手である。
これをやられた相手は特に他にいい手がなければ、同じように歩を突き返すのが普通だが、習甦は歩をつき返さず7三銀とした。
これは基本的にはその時の盤面の評価、次の一手でどう盤面が良くなるかという評価に重きをおくコンピューターらしい手である。
人間になら「これは後で得をするから、歩を突き返そう」と一言教えれば僕でもわかることがコンピューターには難しいのである。
しかも本局でもこの歩を突き返さなかったことが後半効いて阿部光瑠四段を随分楽にしました。
誘い出した無理攻め
上図は6五桂と習甦が攻めてきたところである。しかしこれはまだ阿部光瑠四段の守りが堅く、攻め切れないのは僕にもわかる状態である。しかし習甦はせめていった。
後のインタビューで分かったが、これは習甦の癖であり、阿部光瑠四段は練習段階でこの癖を見ぬいており、この悪手を引き出したいと考えていたようだった。
悪い癖が再現されてしまうというのはコンピュータの弱点である。しかし、そんなことを開発者の人はわかっているわけで、練習用に習甦を貸し出した開発者の竹内氏はあっぱれだと思います。
終盤の無理攻め
終盤の勝敗が決定的になってからの習甦の歩の連打などは見苦しいとも感じたが、これも人間にはミスがあると考えると非常にドキドキさせられた。(月下の棋士の世界なら対局中に相手が寿命を迎えるのは珍しいことではないのでより緊張感が増す)
やはりプロへの負担はでかい
対局終了後のインタビューで阿部光瑠四段は3月に入ってからは毎日2局指してトレーニングをしたと言っていた。プロは人間に勝った数で対局料や自身の成績が決まっていくものであることを考えると、コンピュータ戦にこれほど時間をとられるという負担はものすごく大きいなと感じた。
余談
- 将棋とは思えないニコ生のスタジオすごい
- 夢枕獏先生が将棋全然わからんのに出てきたのが面白い
- コンピューター側の指し手は大変そうなので途中で交代してもいいとか、人間側が選べてもいいとかあってもいいと思う。